発芽そば発酵エキスは、そばの新芽の青汁を乳酸菌発酵して作られています。緑色だったエキスは、発酵後はきれいな赤色になります。発酵の過程で、エキス中の各種成分はどのように変化しているのでしょうか。私たちは、さまざまな機能性成分が増加していることを確認しています。発酵の力を、あらためてご紹介します。
まずは、アミノ酸の変化です。アスパラギン酸、トレオニン、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、システイン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニンの変動を調べたところ、トレオニン、セリン、グルタミン酸、アルギニンは発酵によって減少していたものの、ほかのアミノ酸は増加していることがわかりました。
研究では、高い血圧を下げる働きやストレスを軽減する働きなどが報告されているGABA(γ-アミノ酪酸)の変動も分析しています。凍結乾燥物100gあたりの含有量はそばの新芽の青汁が0.0747mgだったのに対し、発芽そば発酵エキスは1.524mgでした。GABAの含有量が20.7倍に増えた計算となります。
発酵前後でのGABAの変化
そのほか、そばの新芽には含まれてなかった3種類のペプチドの存在が明らかとなっています。そばの新芽に含まれるたんぱく質が発酵によって分解された結果、各種アミノ酸やペプチドが増えているというわけです。
発芽そば発酵エキスの特徴でもある赤色の色素成分の分離を試みたところ、ケラシアニンというアントシアニンの存在が確認されました。ケラシアニンは、そばの新芽の赤い茎に含まれている成分です。また、有機酸の分析も進めました。有機酸については、0.24 mmol/Lのコハク酸、109.36 mmol/Lの乳酸、20.00 mmol/Lの酢酸が確認されました。乳酸菌によって生成された乳酸が最も多いという結果です。
この乳酸によって発芽そば発酵エキスのpHは低下します。赤色の色素であるケラシアニンはpHによって色調が変化しますので、発酵が進むにつれてエキスは明るいルビー色へと変化していきます。
次にご紹介するのは、機能性への関与が最も大きいと考えられるフラボノイドの変動です。そばの新芽には、ソバポリフェノールとして知られているルチンをはじめ、ケルセチン、オリエンチン、イソオリエンチン、ビテキシン、イソビテキシンなどのフラボノイドが含まれています。これらのフラボノイドの含有量も、発酵の影響を受けています。具体的には、発酵の過程でルチンが減少する一方で、そのほかのフラボノイドの含有量は増加することがわかっています。
ルチンが減少してケルセチンが増加する理由については、ケルセチンの配糖体であるルチンの構造中の糖が発酵によって切断され、ケルセチンが生成したものと考えています。なお、ルチンとケルセチンには抗酸化作用がありますが、活性はケルセチンのほうが強いと考えられています。
実験では、血圧の上昇を引き起こすACEの阻害活性を調べました。特定保健用食品と比較したところ、発芽そば発酵エキスには、およそ16倍のACE阻害活性があることがわかりました。本態性高血圧ラットに発芽そば発酵エキスを投与する実験では、血圧上昇を有意に抑制するという結果を確認。簡単なヒト試験でも、血圧の上昇を緩やかに抑制するという結果が得られました。
ACE阻害活性を持つ物質を分離・定量したところ、ニコチアナミンとヒドロキシニコチアナミンを確認することができました。100gあたりの含有量を算出すると、青汁中のニコチアナミンは7.9 mg、ヒドロキシニコチアナミンは25.1 mgだったのに対し、発酵そば発酵エキス中のニコチアナミンは21.5 mg、ヒドロキシニコチアナミンは83.3 mgであることが明らかになったのです。なお、そばの新芽にはニコチアナミンが18 mg、ヒドロキシニコチアナミンが48 mg含まれていると報告されています。
発酵前(下)と発酵後(上)を比べるとヒドロキシニコチアナミン(HNA)とニコチアナミン(NA)が増加していることが分かる
もともと栄養豊富なスプラウト野菜を植物性乳酸菌で発酵することで、機能性成分を増加させるだけでなく、栄養素を体に吸収されやすい形に変化させることができます。発芽と発酵というふたつの技術で付加価値を高め、皆様の健康に役立つ商品を今後も開発していきます。
詳細は過去のnote記事にも掲載していますので、ぜひご覧ください。
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